研究課題/領域番号 |
21720249
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会 |
研究代表者 |
飯田 直樹 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪歴史博物館, 学芸員 (10332404)
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キーワード | 地域支配 / 大阪 / 都市 / 警察 / 方面委員 / 社会事業 / 社会政策 / 部落 |
研究概要 |
今年度は、昭和戦前期の大阪府方面委員による活動についての検討と、大阪における地域支配と他地域との比較検討も行った。具体的には、他地域における方面委員制度類似の社会事業制度の特徴を検討するとともに、東京や京都における警察の活動についても調査した。すでに昨年度までの調査によって大阪府方面委員制度は部落対策事業としての性格が強いことが判明したが、この特徴は同制度の前史として位置づけられる日露戦後の大阪府警による社会事業にもあてはまることであり、したがって、同制度のこの性格は前史である警察社会事業から引き継いだものであることと考えられる。また、同制度の実質的な創設者である小河滋次郎は、創設当初の同制度に対して有効な部落改善事業として期待していたこと、部落を有する地域に積極的に方面委員を設置する考えであったことなどが判明した。また、昨年度、警察が、創設期の方面委員制度の普及・定着化のために、制度普及講演会での貧困世帯への貯金奨励、貧困児童の積極的な組織化などの分野で積極的な役割を果たしたことを明らかにしたが、警察がこれらの分野を重点的に展開した地域というのは、部落地区や部落住民と「一般」住民との混住地区がほとんどであることが判明した。つまり、警察も部落改善時業としての方面委員制度の有効性を認め、創設当初それを積極的に活用していたことが推測されるのである。この警察の活動が方面委員制度が定着・普及していくなかで、どのように展開され、変化していくのか、方面委員制度の性格を考える上でも重要であるので、次年度にはこの点についても検討していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的をほぼ達成しているとともに、計画当初に想定していた論点を深めることができている、あるいは別の論点-部落問題と警察社会事業あるいは方面委員制度-を獲得しているため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に他地域との比較に重点を置きつつ、研究を総括するなど、当初の計画どおりに推進するとともに、新たに得た論点を全体の研究計画に位置づけたい。近代大阪の都市社会が学区ごとの「複層」的な社会から「単一」の社会、すなわち現代社会へと転換したということを前提にして、米騒動前後の地域支配構造再編を位置づけ直したいと考える。
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