平成22年度は、前年の成果をふまえて次の二点の課題を設定し研究を進めた。 一つは北周長安宮の中心部の空間構成の復原と隋唐長安との関係の検討である。研究手法としては、文献史料とともに近年の発掘調査の成果を積極的に活用し、従来不明であった宮の中心部、特に正門付近の空間構成を明らかにした。この結果、北周長安と隋唐長安の中心部が同様の空間構成をとること、また北周の正門が宮殿と門の二つの性格を有する特殊な建築様式であったことが明らかになった。従来、隋唐長安の形成においては、北斉の〓の影響が強いと考えられてきたが、一点目の成果は北周長安からの影響を再検討する必要があることを示している。加えて、北周長安宮正門に見られる門と宮殿の二つの性格をあわせ持つという特殊な形態は、唐の大明宮含元殿と共通するものであり、独特の建築様式と考えられてきた含元殿が北周長安の正門の系譜を引く可能性があることがわかった。北周の長安はその後の都城の形成に一定の影響を与えたと考えられ、今後はさらに宮全体へと検討範囲を広げ、その実体と影響の大きさについて明らかにする予定である。 二つめの課題は南朝の建康における朝堂の立地の特定である。朝堂は、都城史における建康の位置付けや南朝の朝政の性格を考える上で重要な材料となるが、南朝後期の朝堂の立地に関しては複数の見方が並立している状況にある。本年は、朝堂の機能や使用の実例に注目し、史料の収集と基礎的な分析を行った。今後はさらに関連史料の分析を進めつつ、立地を特定していく予定である。
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