階唐長安城の形成については、従来は曹魏の鄭や北魏の洛陽など南北朝の諸城、とりわけ北斉の鄭城の影響を重視する見方が強かった。しかし本課題における平成22年までの研究により、不明な点の多かった北周長安の空間構成の一部が明らかになり、北周長安と階唐長安をより詳細に比較することが可能になった。その結果、両城の間に様々な相似点があり、北周長安が階唐長安の直接の前身である可能性が高まった。そこで平成23年度は、引き続き北周長安の空間構成の復元を進めるとともに、隋唐長安との比較検討を行い、両城の関係と隋唐長安の形成過程について検討することを主な課題とした。特に検討がまだ及んでいない宮城周辺部を中心に調査し、その上で宮城全体について隋唐長安との比較検討を行い、両城の相関性を明らかにすることに注力した。まず基本史料の調査により城門及び城壁について両城の相関を示す材料が得られた。一方、考古学的な成果の利用については、中国における新成果の発表はなく、過去に公表されている発掘報告等を文献資料とつき合わせ、その整合性を確認した。また北朝期の宮城が漢城の東北角に置かれたことの理由を検証するため、現地に赴き城壁と北朝期の宮城の周辺地形の調査を行った。その結果、宮城北壁が渭水の河岸段丘とみられる段差に隣接していることや北周長安の南宮壁の規模等について確認することができた。現在、以上の成果に基づき、隋唐長安は北周長安をもとに構想・建設されたと考え、論文を作成しているところである。両城の相関と晴唐長安の形成過程について明らかにできる見込みである。この他、平成23年度は本研究の成果をふまえた学会動向・研究展望を一編公表した。
|