湾岸アラブ諸国はいずれも非民主的な君主制に立脚した権威主義的統治体制(国政の最高責任者を、選挙等を通じて国民の意思で変更することが不可能であり、同時に国政の最高責任者である首長あるいは国王を公然と批判することはタブーとなっている)を採用している。このような非民主主義的な体制を採用する国家において、国民を統合し、非民主的な体制を維持するために、自国の歴史、すなわち国史は一定の役割を担っていると考えられる。そこで、本研究では湾岸アラブ諸国の歴史教科書(小学校から高等学校)を収集し、その内容を分析した。それにより、湾岸アラブ諸国の「国史」がどのような要素から構築され、またどのような要素が排除されているのかが、明らかとなった。
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