研究概要 |
当該年度は本研究課題の最終年度にあたるため、主に海外での成果報告に力を入れた。 まず、イスラエル・ハイファ大学で開催されたマムルーク朝研究の国際会議Egypt and Syria under Mamluk Rule : Political, Social, and Cultural Aspects (April 11-13)に参加し、"Waqf as a Means of Holding Assets : The "Self-Benefitting Waqf" in Mamluk Egypt"の題目で研究発表を行った。本発表では、宗教財産とされるワクフが現実には寄進者の私有財産保全の機能を有することを寄進文書および法学書を史料として明らかにした。本国際会議のproceedingsは論集として刊行される予定であり(タイトル、出版時期未定)、そのための論文原稿を英語で執筆、平成24年1月に提出した。 次いで、ベルギー・ゲント大学で開催された国際会議20th Colloquium on the History of Egypt and Syria inthe Fatimid, Ayyubid, and Mamluk Eras (10th-15th centuries) (May 11-13)に参加し、"Religious Endowments of the Mamluk Amir Qijmas al-Ishaqi"の題目で研究発表を行った。この報告は、本研究課題の成果として昨年度日本語で発表した論文「あるマムルーク軍人の生涯と寄進」(『史学雑誌』120-3)の一部を英訳したものであり、マムルーク朝の一軍人キジュマースの実施した寄進事業の内、特に自身を受益対象として設定した、財産保全策として用いられたワクフについて文書から具体的に明らかにした。 これらの国際会議での報告は、欧米・イスラエルの研究者たちから大いに称賛され、海外の学会におけるワクフ研究およびマムルーク朝研究にインパクトを与えることができた。
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