研究概要 |
H21年度のオランダ公文書館における植民地行政文書を中心とした文献調査、およびH22年度の西スマトラ村落でのフィールドワークの2調査により得られた資料・データをもとに、H23年度は本研究の成果をまとめ論文および国内外の学会での成果発表を目標とした。 H22年度より論文執筆をすすめていた20世紀初頭の多妻婚論争の考察から、世俗的知識人とイスラーム知識人の言説空間における法・規範の交錯を分析した論文を英文でまとめた。この論考により、当時の知識人が世俗的であるか否かに関わらず、伝統的に継承されてきた多妻婚の慣行について再解釈をおこない、多妻婚を制限あるいは禁止すべきとする議論を積極的に展開していたことがわかった。また、多妻婚に限定したディスコースの考察により、知識人の間で近代法や宗教や土着慣習による法・規範の解釈が揺れ動いていたことを描き出すことができた。本考察はThe Familiy in Flux in Southeast Asia Institution, Ideology, Practice (京都大学出版会)の中に掲載され出版された。 また本考察は、9月にオーストラリアのパースで開催された国際会議Indonesia Council Open Conferenceにおいて口頭発表も行なった。海外の専門家との意見交換を通じ、本研究をさらに発展させる糸口をさぐることが可能となった。 H15年および22年に実施した西スマトラ村落での聞き取り調査のデータを使い、20世紀初頭から中頃までの現地社会の婚姻慣習について分析を行なった。当時の知識人が新聞・雑誌紙上で批判的に描いていた伝統的婚姻慣習と実際の村落社会の慣行との乖離について国内の学会で発表した。さらに、H23年度は聞き取り調査を再度実施し、20世紀半ばから現代にかけての変容を理解するための情報を収集し、西スマトラ村落の婚姻慣習と規範の変容を、母系生社会制度や村落社会のおかれた環境の変容との関連性の検討も行なった.
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