本研究は、大英図書館が所蔵する英国東インド会社(EIC)トンキン商館文書の分析を通じて、近世ベトナム政治史の解明を目指さんとしたものである。 大英図書館での原文書閲覧とその分析により判明した事実のうち、特に重要なものに、以下のものがある。 (1)EICのトンキン駐在に於いては、特に初期にはポルトガル語を話せる人材が大きな役割を果たした。 (2)貿易港フォーヒエンには毎年多数のシャム船が入港し、盛んに取引を行っている。また、船長にはフォーヒエンに現地妻を持つ者もいるなど、広く海域アジア全般で見いだされる貿易港の特徴が当てはまる。
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