研究概要 |
23年度の研究目的は、移動する人々がそれぞれの地域社会とどのような関係にあったのかを明らかにし、地域社会との紐帯を保った人々の拡散がユーラシアの東西交流にどのような影響を与えたのか、その基本的構造を解明することである。そのために(1)「広域社会」の形成過程の考察(1-a)モンゴル期東北アジア・東南アジアにおけるムスリムの移動と拡散、(1-b)モンゴル期東北アジア・東南アジアにおける漢人の移動と拡散、(2)広域社会の相互関係の考察(2-a)海域アジアにおける漢人、ムスリムの広域社会の相関性、(2-b)イル=ハン朝におけるイラン=イスラーム社会とトルコ,モンゴル文化、という観点からアルダビール文書・ハラホト文書およびペルシア語・漢語史料史料読解、また、中国、韓国、日本、イランで現地調査をおこない、総括として学会報告、論文作成をおこなった。(1-a)(2-b)に関しては日本オリエント学会、Krakowで開催されたEuropean Conference Iranian Studies7で報告をおこない、『貿易陶磁研究』にインド洋海域におけるムスリムの中国陶磁貿易に関する論考、International Journal Nameh-ye Baharestanにイランにおけるモンゴル勅書発給と漢字印使用に関する論考を発表した。また、(1-b)に関してはBonn Universityで開催されたInternational Simposiom "Asian Straits"において宋元代のアジア海域での漢人の活動に関する報告をおこない、復旦大学で開催された国際学術会議「伝承与変革」において中国およびアジア海域における中国銀の流通に関わる元朝の財政政策に関する報告をおこなった。なお、(2-a)は本研究の総括的な部分に関わるテーマであるが、これに関しては北京首都大学でおこなわれたWorld History Association大会で漢人・ムスリムのディアスポラの相関性に関する報告をおこない、論文として『モンゴル史研究』にモンゴル時代の移動と交流に関する論考、Asian Empires and Maritime Contacts before the Age of Commerce IIに帝国とディアスポラの関係についての論考を発表した。
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