海域アジアにおける漢人とムスリムのコミュニティの形成とその拡散を陶磁器、金銀銅銭、香料、真珠などの物流ネットワークとの関係から考察を試みた。すなわち、(1)漢語史料・ペルシア語史料・アラビア語史料・モンゴル語史料をはじめとする文献史料、陶磁器・銀錠・銅銭などの考古学資料の分析、現存する史跡・遺構や地方誌等の文献から復元した都市空間・流通経路の分析を通じて、主に江蘇・漸江・福建地方と海域アジアとの関わり、さらには、(2)インドとペルシャ湾・紅海を結ぶ交易ルートにおける中国製品の貿易とその担い手となる商人集団の活動実態を明らかにした。ただし、漢人商人とムスリム商人がそれぞれ持つ広域的なコミュニティ・ネットワークの相互関連性にはなお不明瞭な点も多く、今後の研究課題となる。
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