本年度は韓国を訪問し、高句麗史研究をはじめとする韓国古代史を研究する韓国人研究者と意見を交換し、韓国における高句麗研究、さらにはそれと密接に関連する新羅・百済の研究状況について情報を収集するとともに、研究のあり方などについて意見交換を行った。 文献史料調査では、高句麗の対倭外交を、当該期の東アジア世界における高句麗を取り巻く状況や高句麗の対外関係全体の中に位置づけて考究するために、昨年より作成してきた高句麗対外関係データベースの作成をさらに進めた。さらに高句麗と倭の関係を理解するためにも、高句麗滅亡後の倭在住高句麗遺民の位置づけについて検討し、韓国の東北アジア財団編『古代環日本海交流史 1部 高句麗と倭』(東北亜歴史財団、2010年)に「百済・高句麗遺民と倭・日本」と題して論文を執筆した。 これらの作業を通じて史料の検討・解釈を深め、6世紀末~7世紀における高句麗の対倭外交の位相を解明してきた。そして、これまで進めてきた研究成果を2010年12月11-12日に開催された「平成22年度九州史学会大会」の〈朝鮮部会〉で「6世紀末・7世紀の東アジア情勢と高句麗の対倭外交」として発表した。さらにそこでの討論をふまえ、報告内容を若干修正して、「六世紀末から七世紀半ばの東アジア情勢と高句麗の対倭外交」という論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。
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