研究概要 |
本年度の研究成果は以下のとおりである。 1.従来の教育史研究、言語政策史・運動史研究の成果を踏まえ、朝鮮人側の文明化への希求と統治者側による統治政策への動員の過程について、従来の筆者の言語政策・運動論研究について、関連研究の動向をおさえ、さらに議論を補強する一方、全体像の提示を試みた。前者については、「朝鮮総督府『諺文綴字法』の歴史的意味・再論」(『年報朝鮮學』12、2009年5月)、後者については、「『言語問題』からみた朝鮮近代史-教育政策と言語運動の側面から-」(『中国21』31、2009年5月)の論文各1編を発表したほか、韓国でも関連論文1編が公刊される予定である(2010年5月刊行予定)。これ以外にも、関連研究について発表するため、韓国へ一度出張をおこなっている。これらの研究成果については、さらに著書としての刊行準備をおこなっており、2010年度中の刊行を予定している。 2.言論・メディア史研究の動向をおさえるほか、関連資(史)料の収集をおこない、植民地期朝鮮の文化運動史に関する理解の深化のため、それら資(史)料の分析をおこなった。この収集のため海外(韓国)、国内(東京)へ数度にわたり出張した。現在その分析結果については、次年度における研究成果の公表に向け準備中であり、一部の成果は1,で予定している著書のなかにも反映させる予定である。また、言論・メディア史関連を含めた、近代朝鮮の文化史に関する研究全般の動向について整理し、当該論稿を掲載した図書(『朝鮮史研究入門(仮)』)が2010年度中に公刊される予定である。 以上、おおむね計画通りの成果を得ることができた。近代朝鮮の文化ナショナリズムの形成とその要因に関する理解が深まり、また現状において注目されていないさまざまな論点を発見することができた。継続して研究を続けていく必要性を感ずるのである。
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