研究課題/領域番号 |
21720268
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
青島 陽子 愛知大学, 文学部, 助教 (20451388)
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キーワード | 西洋史 / 教育史 / ロシア地域研究 / 民族問題 / 19世紀 / 東欧史 |
研究概要 |
本研究の課題は、帝政期ロシアが辺境・民族地域に対してどのような眼差しをもち、どう統合していこうとしたのかを、辺境・教育管区への教育政策を分析することで具体的に明らかにすることである。三年目となる平成23年度は、初等教育政策について重点的に研究を進めた。まず内地の初等教育政策について考察し、さらに西部諸県における初等教育政策について分析を進めた。これらの両研究によって、内地の教育政策と辺境・民族地域に対する教育政策を対照的に分析することが可能となった。19世紀中葉の改革期にロシア政府は、本格的に民衆の教育を検討するようになった。研究を進めるにしたがい、この民衆教育の問題が、ロシア社会の近代的変革のあり方や、その問題に対して、ロシア帝国が異民族を支配したことがどう影響を与えたのかを明らかにする、非常に重要な論題であることが分かった。 内地の初等教育政策に関しては、10月のロシア史研究会大会において、「ロシア農奴解放150年:「大改革」の歴史的意義をめぐって」という共通論題のパネリストとして報告をした。ここでは、大改革期において、政府は内地の初等教育普及には消極的な態度をとっていたことを明らかにした。この論文は、平成24年度5月に公刊される。一方で、論集『クラクフからヴィリニュスへ』に寄稿した英文論文では、西部諸県に対する初等教育政策を考察した。ここでは、ロシア政府内には極めて多様な対立的見解が錯綜しており、西部諸県の初等教育問題が部局間の争いの焦点になっていたこと、そのなかでも政府が積極的に教育に介入すべきであるという見解が強かったことを論じた。これらのことから、西部諸県では、内地に先行して、近代的国民教育政策が展開していたことが分かる。この論文は、平成24年度に公刊される予定である。内地の政策と辺境・民族地域の政策の相互関係については、いままであまり分析されてこなかったので、研究史に対する重要な貢献になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画を変更し、西部諸県の教育政策(およびそれと内地の政策との関連性)の研究に重点を移したために、研究全体の内容は変化したが、達成度はおおむね順調だと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
残りの年数はあと一年であるが、すでに昨年度、計画を微調整したので、それに沿って最終年度は成果をまとめるようにする。すなわち、とくに初等教育の分野に着目しつつ、西部諸県の教育政策と内地の教育政策の関連性に焦点をあて、その他の地域も念頭におきながら、ロシア帝国の辺境・民族地域に対する教育政策の特徴をまとめていく。現在のところ、変更後の研究方針については,問題点はない。
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