研究課題
研究代表者は平成21年度と22年度の研究成果を受け、デンマークにおけるルーン石碑の個別分析をほぼ終えると同時に、紀元千年前後のデンマークに関する歴史史料全体の中にルーン石碑を置き直し、その史料的価値を明らかとする作業をおこなった。名古屋大学グローバルCOEプログラムで開催された国際会議で報告したRole of the L1fe of Archbishop Unni of Hamburgin the Gesta Hammaburgen ecclesiae pontifisumにおいては、当該時期のデンマークについて最も重要とされる『ハンブルク司教事績録』を再検討し、この史料が主張するデンマーク王ゴーム老王がドイツ王に敗北したとする記述は、ハンブルク大司教座の意向を受けた『事績録』筆者による創作であることを明らかとした。「紀元千年期スカンディナヴィアにおける土地所有を巡る一考察」では、10世紀のデンマークにキリスト教が導入されるにつれて、土地所有の確認が、従来のような石碑を用いた視覚的方法ではなく、文書による情報管理へと移行する様を跡づけた。また「紀元千年期スカンディナヴィア史料論に向けて」では、スカンディナヴィア独自の歴史史料であるルーン石碑の分析に関する方法論とその成果を、同時代の他の歴史史料全体の中に位置づけ、史料という観点から、スカンディナヴィア世界と他のヨーロッパ地域との相違点と相同点を明らかとした。以上の研究成果により、ルーン石碑のもつ他の史料にはない歴史史料としての可能性にくわえ、そのようなルーン石碑を生み出した歴史空間としての紀元千年期のスカンディナヴィアの特性も明らかとなりつつある。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
史苑
巻: 72-2 ページ: 95-105
Configuration du text en histoire Proceedings of the international conference : Hermeneutic Study and Education of Textual Configuration(Osamu Kano ed.)
ページ: 29-39
『歴史におけるテクスト布置「テクスト布置の解釈学的研究と教育」第12回国際研究集会報告書』(加納修編)
ページ: 171-179
西洋中世文書の史料論的研究平成23年度研究成果年次報告書(岡崎敦編)
ページ: 46-61
史学
巻: 80-2 ページ: 133-135
UP
巻: 463 ページ: 25-30
http://www009.upp.so-net.ne.jp/m-ozawa/