本研究の成果は次の三点に要約される。第一にルーン石碑の歴史学的分析手法の確立とその精緻化である。ルーン文字のテクストならびにコンテクスト双方に注目し、石碑の社会的機能を抽出する分析手法が確立された。第二に以上の方法論に則ったルーン石碑の分析である。とりわけハーラル青歯王によるイェリング石碑が多様な視認者を意識して構築されたモニュメントであることが証明された。第三にあたらしい中世史像の構築である。紀元千年のスカンディナヴィア世界は周辺諸国さらにはロシア、イスラーム世界、ビザンツ世界といったユーラシア世界と交渉を行う政治体であることが提示された。
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