研究概要 |
2009年度は、イギリスの首都ロンドンを構成する都市共同体=選挙区のひとつ、ウェストミンスタにかんして、重点的に研究を進めた。 (1) 18世紀・19世紀初頭の選挙や政治参加、世論形成を、文化史的アプローチから考察する本研究では、当時の手稿史料にくわえて、新聞・雑誌、選挙パンフレット、さらには視覚史料として諷刺版画が重要な史料となる。そこで2009年8月から9月にかけて、ロンドンの英国図書館ならびに同図書館コリンデイル分館、国立中央公文書館、ロンドン大学歴史学研究所等において、18世紀後半から19世紀初頭の選挙や民衆政治にかんする史料の収集・調査を実施した。また研究にあたり、『ウェストミンスタ歴史データベース』など各種電子データベースも活用した。 (2) 本年度の研究調査から得られた知見をふまえて、2009年9月のSixth Anglo-Japanese Conference of Historiansでは、'Belisarius the counterfeit? Lord Cochrane, war and British radicalism, 1807-1818'と題する報告を行ったほか、Penelope Corfield教授(ロンドン大学ロイアル・ホロウェイ校)やMiles Taylor教授(ロンドン大学歴史学研究所所長)をはじめイギリスの研究者との意見交換を進めた。さらに、同年11月に開催された第107回史学会大会においても、「ナポレオン戦争とイギリス急進主義-コクリン卿の事例を中心に」という題目で、研究の中間報告を実施した。これらの報告では、首都の選挙区における海軍の政治的・文化的意味を当時の議会改革運動の関係から考察しており、2010年度に論文が日本語・英語双方で公表される予定である。
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