研究課題/領域番号 |
21720273
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
難波 ちづる 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (20296734)
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キーワード | フランス / インドシナ / 日本 / 戦犯裁判 / 第二次世界大戦 / 植民地支配 / サイゴン裁判 / 東京裁判 |
研究概要 |
フランスが第二次世界大戦終結後、いかにしてインドシナにおける植民地支配を再開し、また、連合国を中心として確立された新たな国際秩序のなかで、いかにして国際社会に確固たる地位を確立しようとしたのかを、日本人戦犯裁判とフランスとの関わりという観点から明らかにした。 フランスは、80年にわたってインドシナにおいて植民地支配を確立していたが、1940年の日本軍仏印進駐によって強いられた5年近くにわたる日本との共存関係、そして1945年3月の仏印処理による宗主権の喪失によって、戦後、この地における植民地統治の基盤は非常にあやういものとなっていた。終戦直後、インドシナ北部には中国軍、南部にはイギリス軍が駐留することになり、また、植民地主義に否定的なアメリカの意向もあり、フランスにとって、インドシナにおける支配の再開を確実なものにすることが喫緊の課題となっていた。そのような状況のなかで、日本がインドシナにおいて犯した戦犯行為をフランスが裁く場である、BC級戦犯裁判のひとつであるサイゴン裁判は、フランスのこの地における宗主権の存続を正式に主張し、また、日本の統治を否定し、その影響力を無化するために重要な手続きであるとフランスはみなしていた。裁判の内容と、それをめぐるフランスの反応を分析することで、フランスが、戦時期の日本との「共存関係」を徹底的に否定し、対日協力のそしりをかわそうとする意図を明確にみることができる。また、A級戦犯を裁く東京裁判にもフランスは判事と検事を参加させたが、ここにおいても、連合諸国と密接な協力を維持しつつ、裁判のなかでインドシナにおける日仏共存を否定するフランスの態度がみられる。フランスはこれらの裁判を通して、連合国の一員である「戦勝国」として、国際社会におけるフランスの地位を確立し、戦後の植民地支配の再開にむけて地盤を固めようとしたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマに関する一次資料をほぼ読み終え、それに基づいた日本語論文を完成させ、また、それに加筆したフランス語論文も執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究さらに充実させるために、日本人やフランス人当事者のインタビューを行う予定である。それによって、一次資料の不足を補い、かつ、資料だけからはみることのできない新たな視点を提示することができるのではないかと考える。
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