平成24年度は、研究計画で触れた都市ブルッヘの宗教文化と贖宥の関係について引き続き史料調査を行うと同時に、ブルゴーニュ公国における教皇贖宥およびその祝祭と都市ヘントの関係について重要な成果をまとめることができた。これまで、15世紀後半のブルゴーニュ君主と都市の関係を宗教的な要素を媒介として考察する研究はさほど多くなかったが、本年度の研究では、とりわけ15世紀後半においてもっとも重要な都市反乱の一つと考えられる1467年のヘントの反乱と、同時期のこの都市で君主認可のもと開催された教皇贖宥の祝祭の関係について綿密な実証的分析を加え、君主政治と都市の宗教文化がいかに密接に絡み合っていたのかを明らかにした。手順としては、まずこれまでに調査・収集した史料に新たな解釈を施したうえで、夏期に海外学会の場でこの問題に関する報告を行った。秋期には、さらにヘント市立文書館でこれに関する補足調査を行い、都市会計簿から新たな情報を発見することに成功した。その後、これらの成果は英語論文の形で纏められ、まもなく刊行される論集に収録される予定である。 なお、本年は本研究の最終年度にあたるが、これまで積み重ねられてきたブルッヘやヘントといった都市に関するケーススタディは、中世後期のフランドル都市における宗教と社会の関係について一定の像を提示しえたと考えている。しかし、本研究の成果はそれにとどまらず、メヘレンやトゥルネといった他地方の南ネーデルラント都市に対象を拡大した次年度以降の研究へと引き継がれてゆく予定であり、四年間の研究を通じて、理論的およびデータ的な面で、今後の議論のための強固な基盤をも構築しえたと考えている。
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