1.実地調査による考古学資料からの使用痕分析と残存デンプン粒分析の追認 実地調査はこれまでの調査で追認作業の必要な青森県下北半島不備無遺跡資料の分析を行った。不備無遺跡資料は本地域の晩期資料が層位的に確認でき、分析に有効な遺跡である。調査は金属顕微鏡を用いて、使用痕の写真撮影と資料の法量や石材名などの基本的なデータの記録を取った。同時に、残存デンプン分析のための試料をピペットで採取し、偏光顕微鏡で観察した。その結果、使用痕分析では石匙を中心に皮、骨、イネ科以外の植物を加工したと推定される光沢を見出したほか、磨石類から残存デンプン粒を発見した。これまでの分析をふまえたうえでイネ科を積極的に加工したと考えられる痕跡を見出せなかったことから、晩期を通じて北日本ではイネ科植物が栽培の主体となっていた可能性は低いと想定された。 2.実験による使用痕データおよび現生デンプン標本テータベースの作成 石材・使用法・加工対象物に関する各条件下の穀物と堅果類の脱穀・製粉実験をおこない、使用痕データを集積した。また、これまで作成してきた現生デンプン標本に不足していた50種分を追加しテータベースを作成した。作成したテータベースは統計的に傾向を見出し、今後遺跡検出デンプンとの比較のための基礎データとなった。 3.使用痕分析・残存デンプン粒分析の結果の公表 分析結果を全国学会、国際学会で公表した。また、これまでの成果を論文化した。
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