今年度は、昨年度から引き続いてまず北陸地方に特徴的な半〓形勾玉の製作技術や製作工程を解明し、地域性について考えるとともに、弥生後期・終末期には北陸でもヒスイ定形勾玉の製作が開始されていたのではないかという見通しの下に、その候補となる遺跡の資料調査を行った。続いて、古墳時代の糸魚川地域周辺におけるヒスイ勾玉生産遺跡の検討を行った。その結果、笛吹田遺跡や南押上遺跡の他にも古墳前期に遡るヒスイ勾玉生産遺跡が複数存在すること、これらの遺跡では弥生時代に通有の擦切技法が衰退していること、また滑石や蛇紋岩などの玉類が同時に製作されていることなどが確認された。弥生後期・終末期から古墳中期に至るヒスイ勾玉製作技術の変遷過程を解明するために、今後はこれらの遺跡の時期を精査するとともに、編年を明らかにすることがもっとも重要と言える。このほか地元研究者との情報交換や研究打合せを行った。 分布や流通に関しては、研究協力者の協力を得て北部九州地方の古墳などから出土したヒスイ勾玉の調査を行うとともに、出土数の変化や流通過程などの検討をすすめた。また、新羅や伽耶を中心とする韓半島出土のヒスイ勾玉の集成にむけて、研究協力者と研究打合せを行ったほか、調査・研究状況の確認、所蔵施設の確認、そして文献探索などの情報収集を行った。さらに、大学院生の協力を得て韓国出土のヒスイ勾玉の資料調査を実施した。なお、韓国出土のヒスイ勾玉に関する論文発表にむけて現在準備をすすめているところである。
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