研究目的・研究実施計画に照らし、平成22年度は、主に近畿地方および関東・東北地方の人物埴輪を中心とする資料観察と集成をすすめた。具体的研究としては、以下のような(1)資料集成、(2)資料観察、(3)分析・考察に取り組んだ。 (1)資料集成 主に近畿地方の人物埴輪に関し、発掘調査報告書等に基づく集成作業と、データベース化作業を実施した。また、関東・東北地方の資料に関する補足の集成作業を実施した。 (2)資料観察 主に近畿地方および関東・東北地方の人物埴輪について、観察と記録化を進めた。実見対象資料としたのは、一古墳から複数個体の人物埴輪が良好に出土した資料群、および注目すべきジェンダー表現を有する資料である。関係機関での資料見学および博物館展示の見学により、奈良、大阪、群馬、福島等において資料を実見した。こうした資料観察により、身体表現の細部に関する観察ならびに写真撮影等による記録化を行った。 (3)分析・考察 観察を実施した資料を中心に、人物埴輪のジェンダー構造について追究するための、分析・考察を実施した。資料に関する分析・考察としては、古墳ごとに実施した人物埴輪の身体表現に関する属性分析と、個別の資料群どうし、ならびに地域間の比較検討を実施した。同時に、本研究と密接に関連する日本の異性装史に関して、学史およびクィア・スタディーズの観点から再検討をすすめるための作業を、関連学会への参加をまじえながら実施した。その結果、人物埴輪のジェンダー化過程および日本異性装史を再検討するための視座に関して一定の成果を得た。なお、こうした分析・考察に基づく成果発表の一環として、平成23年度前半実施予定の国際学会への発表エントリーを平成22年度に実施した。
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