今年度は製作していただく窯元に製作依頼・打ち合わせのみを行う予定であったが、諸事情により先行して壺屋焼(沖縄県)の調査を行った。具体的には荒焼窯元・榮用窯の新垣榮用氏に1斗(約18リットル)人の壺(トゥックイ)を製作していただき、その模様をビデオ撮影するなどして記録した。合わせて、同氏ならびにご子息の新垣栄氏から荒焼についての聞き取り調査を行い、調査終了後、映像・写真並びに製作工程を整理した。なお、壺屋焼物博物館からは荒焼き全般に関する多大なご教示をいただいた。 調査の結果、荒焼の製作技法並びに道具等には唐津焼・薩摩焼とは異なる点が多々認められた。叩きに使用する道具の形態等については近似する点もあったが、使用方法・保管方法が異なっており、叩く回数も異なっていた。また、荒焼では唐津焼・薩摩焼にみられる内面専用のへラはなく、当て具もしくは手を使用するといった違いがあった。紙面の都合上、全て提示できないが、唐津焼と薩摩焼には共通点が多いのに対し、荒焼は異なる点が多く独自の特徴を持つことが改めて確認できた。これらの特徴については、近代以降の技法の変化なども考慮する必要があり慎重な検討が必要であるが、壺屋焼成立以前に存在した東南アジア系陶器の製作技術が反映している可能性がある。以上、実際に製作していただくことで、考古遺物や近代以降の伝世資料を観察する上でポイントとなる点が浮上してきな。 このほか、次年度以降の調査準備のため、堀越窯(山口県防府市)、越前焼たいら窯(福井県趣前町にて製作依頼・打ち合わせを行い、文献調査を行った。
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