本研究は、6世紀から8世紀の期間における金属器の検討により、国家形成期の日本列島を古代東アジア交流のなかに位置付けようとする試みである。古墳時代後期から奈良時代にかけての時期を「国家形成期」として包括して扱い、金属器とくに金・銀・金銅製品などの伝来や変遷、列島各地への分散など、その意味づけを検討することにより、文献では伝わってこない歴史的事象をうかがうための基礎的研究を行う。本年は、6世紀~7、8世紀の代表的な金工品として、銅鋺および銅鏡の調査を行った。 ・銅鋺の調査 岡山県津山市殿田1号墳および同市荒神西古墳出土銅鋺の調査を行った。とくに、殿田1号墳に関しては2007年に行った発掘調査と出土遺物の分析を通して、6世紀末という副葬年代の確定を行った。殿田・荒神西両例とも鉛同位体比分析が行われており、本調査の成果によって、6世紀末には朝鮮半島産の素材が使用されたのに対して、7世紀半ばには日本列島産の素材を使用されることが明らかになった。また、出土墳の位置づけが、畿内とは異なる様相を示すことを推定した。 ・隋唐鏡の調査 南北朝~隋代、唐初期の銅鏡を対象とした考古学的研究は前後の時期と比較すると、十分なされているとは言い難い。そこで、早稲田大学會津八一記念博物館が所蔵する永徽元年(唐650年)の紀年銘をもつ方格四神鏡や同時期の鏡の調査を行った。また、中国隋唐墓出土の銅鏡を加えた分類・編年の基礎的作業を行い、6世紀末から7世紀半ばまで、4時期に区分を行った。
|