本研究の目的は、古代における北海道から東北地方、さらには本州中央部の「都」へといたる交易ルートの実像を「考古学的アプローチ」はもとより、「文献史学的アプローチ」との比較検討により具体的に明確にするものである。平成24年度の研究は、研究目的にそって次のとおり実施した。 I考古学的調査 (1)北海道における擦文土器の特性の調査は、次のとおりである。①北海道遠軽町、旭川市、千歳市、恵庭市、江別市などを中心に河川流域の交易拠点となる遺跡の立地環境の調査を行った。②同地域の博物館、埋蔵文化財センターなどに収蔵されている擦文土器の特性の調査を行った。(2)東北地方における擦文土器の特性と古代国家関連遺跡・遺物の調査は、次のとおりである。①青森県青森市、深浦町、岩手県盛岡市、一関市、秋田県秋田市、男鹿市の博物館、埋蔵文化財センターなどに収蔵されている東北地方出土の擦文土器関連資料の調査を行った。同地域および熊本県熊本市、天草市の博物館、埋蔵文化財センターなどにおいて古代国家に関連する遺物の調査を行った。(3)調査結果の集積および整理・検討は、次のとおりである。①北海道各地域の擦文土器の特性のデータ集積を進めた。②東北地方から出土した擦文土器の特性のデータ集積を進めた。 II文献史学的調査 (1)文献史料、文字資料の調査は、次のとおりである。①古代の地域名、交易品目、交易方法に関連する文献史料(記録など)の集積を進めた。②秋田市秋田城調査事務所、盛岡市遺跡の学び館において古代の地域名、交易品目に関連する墨書・刻書土器など文字資料の調査を行った。(2)調査結果の集成および整理・検討は、次のとおりである。①文献史料に示された地域名、交易品目、交易方法に関連する記述の集成を進めた。②木簡、墨書・刻書土器など文字資料に示された地域名、交易品目に関連する記述の集成を進めた。
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