6・7世紀における日韓土木技術の系譜とその展開を明らかにするため、日韓双方の発掘調査報告書などの事例を収集する作業を開始した。日韓双方の寺院などの基壇構築とそれにともなう版築技術を追究すべく、基壇の断ち割り調査をおこなった事例を日本では近畿地方、韓国では百済地域を中心に収集した。その結果、版築を一定程度重ねた単位毎に土質を変える方法が百済から日本列島へもたらされ、その後列島内でこれとは異なる版築技術が醸成されていったのではないかという仮説をもつに至った。この仮説が有効かどうかを次年度にさらなる事例収集をおこなうことにより、さらに検証していきたい。 基壇にともなう掘込地業についても日韓双方における事例収集と検討をおこなった。日本列島における7世紀塔基壇にしばしば採用される掘込地業だが、礎石の設置位置の変化により8世紀以降急速に事例が減るという見通しを得た。この見通しを受け、日韓双方の類例をさらに探索していく必要性が生じた。なお、成果の一部は2009年12月に古代官衙・集落研究会にて口頭発表をおこなった。 また、基壇ならびに版築技術を追究する過程で、7世紀の古墳における版築技術の採用経緯についても事例を詳細に検討する必要性が生じたため、類例の収集を並行しておこなっている。この成果については、その一部を来年度同成社から刊行予定の研究書に論文として発表する予定である。 このほか、乱石組雨落溝の構造と変遷についても事例収集と検討をおこない、その成果を『奈文研紀要2010』にて紙上発表する予定である。
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