交付申請書の「研究実施計画」においては、考古遺物・鋳造技術・文献のそれぞれの調査研究から、東アジアにおける失蝋法技術の解明を目指すとした。 考古遺物の調査研究として、本年度も前年度に引き続き、中国ならびに日本における失蝋法関連遺物および鋳造関連遺物の集成・データベース化をすすめるともに、泉屋博古館・奈良国立博物館・ミホミュージアム等にて関連遺物の調査を実施した。1月24~27日には武漢大学歴史学院の張昌平教授を招き、張教授とともに日本国内の機関(泉屋博古館・奈良国立博物館・大阪市立美術館・和泉市久保惣記念美術館・天理大学附属天理参考館)が所蔵する中国青銅器の調査を実施した。鋳造技術の調査として、九州国立博物館等が実施した失蝋法による中国青銅器の鋳造実験に参加し、参加者と意見交換をおこなった。文献の調査として、前年度に引き続き中国および長城地帯・朝鮮半島・日本列島・雲南・東南アジアなど各地における失蝋法に関する先行研究を集成・整理をすすめ、各地における失蝋法の特性、および出現・展開過程について考察をおこなった。 また、以上のような調査研究の成果にもとづき、"TONGLING SYMPOSIUM ON BRONZE CIVILIZATION 2010"(9月23日 中華人民共和国安徽省銅陵市)、国際研究集会「アジアの高錫青銅器-製作技術と地域性-」(11月20日 東京芸術大学)、アジア鋳造技術史学会2010出雲大会(8月28・9日 島根県立古代出雲歴史博物館)、「中国古代青銅器の鋳造技術を探る II」(2月4・5日 芦屋釜の里・マリンテラスあしや)等で研究報告をおこなった。
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