研究概要 |
本研究は、東アジアにおける失蝋法技術の出現・展開過程とともに、各地における鋳造技術の技術基盤の解明を目的として、調査研究をおこなった。 本年度は最終年度であるため、これまでおこなった中国・日本における失蝋法関連遺物や冶金関連遺物の資料集成をまとめをおこなった。また、中華人民共和国湖北省(4月19日~26日)、アメリカ合衆国東海岸地区(11月18~28日)ならびに日本国内の機関が所蔵する関連資料の調査を進めた。中国の調査では、失蝋法関連遺物(楼空状青銅器)である曾侯乙墓尊盤の調査をおこなうとともに、中国側の研究者とも当研究課題についての意見交換をおこなった。アメリカ合衆国の調査では、ハーバード大学、メトロポリタン美術館、プリンストン大学、フリアギャラリーが所蔵する中国青銅器の調査をおこない、現地の研究者とも意見交換をおこなった。これらの調査の成果に基づき、従来の仮説を検証するための鋳造実験を、芦屋釜の里(福岡県芦屋町)にて実施した(3月15・16日)。また、5th Worldwide Conference, Society for East Asian Archaeology (SEAA5)(西南学院大学,6月9・10日)、東亜古代青銅冶鋳業国際論壇(中華人民共和国安陽市,9月1・2日)、日本中国考古学会2012年度総会・大会(九州国立博物館,12月15・16日)で研究報告を行い、『奈良文化財研究所創立60周年記念論集 文化財論叢IV』に成果の一部を発表した。 今後は各方面のさらなる資料の蓄積とともに分析も継続して進める。また、対照鋳造実験も引き続きおこない、東アジアにおける鋳造技術史の再構築を目指したいと考える。
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