本研究は、古代都城の成立ととともに設置されたと考えられる都城の「葬送地」の実態を明らかにするために、当該期の東アジアにおける葬制に関する資料を集成し、考古学的手法を用いて都城の「葬送地」とそこへ葬られた墓の抽出をおこなうことを目的としている。 研究初年度は、基礎資料の整理として、中国・韓国の報告書を中心にデータ集成に努めた。 特に韓国では、慶州・扶余・益山周辺の報告書や論文を収集し、韓国においても都城の成立と共に、墓の分布に変化があること、都城内では埋葬例はかなり限定的であること、伝統的墓地では都城の成立と無関係に墓が連続的に営まれていることなどを見出した。これらは、今後、資料の実見調査や実地踏査を踏まえ、時期的位置づけや、周辺遺構との関連など「墓地の連続性」と「墓の構造」や「葬送作法」といった観点から、都城の葬送地の抽出をおこない、藤原京・平城京周辺の様相と比較をおこなう予定である。 国内では、墓に副葬・供献された土器の流通・入手ルートから造墓集団像について検討するため、藤原京・平城京出土の土器について土師器を中心に実見調査をおこない、都城以外の地域から出土した土器との比較をおこなった。 また、従来の研究成果および本研究の今後の見通したついて、2009年5月に「古代火葬墓の世界」と題する一般講演を、2010年2月に国立慶州文化財研究所において「日本古代火葬墓の比較研究」と題する研究発表をおこなった。加えて、国内における学会・研究会に参加し、研究者との意見交換や情報収集をおこなった。
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