本研究は、古代都城の成立とともに設置されたと考えられる都城の「葬送地」の実態を明らかにするために、当該期の東アジアにおける葬制に関連する資料を集成し、考古学的手法を用いて、「葬送地」とそこへ葬られた墓の抽出をおこなうことを目的としている。 研究計画の2年目にあたる本年度は、前年度の資料集成作業をふまえ、国内・韓半島の資料調査と遺跡踏査をおこなった。特に韓国の扶余地域周辺の遺跡踏査をおこない、博物館において出土瓦・土器の調査をおこなった。この中で、泗〓期における王陵である陵山里古墳群と陵山里寺、東羅城との位置関係が注目される。これら王陵と、都城を取り巻く石室墳群との関係について、今後、墓の構造と墓域の連続性の分析を通じて明らかにしたい。なお、扶余周辺では王陵・寺院が都城と密接な関連をもって配置され、石室墳も羅城外に築かれるのに対し、火葬墓のみが羅城内にあるという点は特異である。羅城内の火葬墓については墓以外の性格をもつ可能性も視野に入れつつ、再評価をおこないたい。 国内では、都城および大宰府・各国府域周辺の墓地について、遺跡踏査や出土土器の観察をおこなった。今後、都城との比較のため、大宰府や国府など地方官衙と墓地との関係についても検討を深めたい。 また、現時点での研究成果について、2010年12月に九州史学会考古学部会において「日韓古代火葬墓の比較研究」と題する研究発表をおこない、同内容を2011年3月に論文として発表した。加えて、国内における学会・研究会に参加し、情報収集に努めると共に、他研究者との意見交換を積極的におこなった。
|