研究課題/領域番号 |
21720296
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (70416410)
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キーワード | 考古学 / 東アジア / 都城 / 葬送地 / 墓制 |
研究概要 |
本研究は、古代都城の成立とともに設置されたと考えられる都城の「葬送地」の実態を明らかにするために、当該期の東アジアにおける葬制に関連する資料を集成し、考古学的手法を用いて「葬送地」とそこへ葬られた墓の抽出をおこなうことを目的としている。 研究計画の3年目にあたる本年度は中国調査を中心とし、陝西省西安の唐代皇帝陵および隋唐長安城周辺の墓地の遺跡踏査・資料見学をおこなった。唐代皇帝陵では昭陵・乾陵を見学し、立地や石刻、倍葬墓など陵園を構成する各遺構を見学すると共に、出土遺物の見学をおこなった。長安城周辺の墓地では、長安城東郊の郭家灘地区周辺を踏査した。また、中国社会科学院西安研究室および陝西省文物考古研究所を訪問し、研究者との意見交換をおこなった。 これらの調査により、分布図上では類似する平城京と唐長安城の天皇陵・皇帝陵および墓の立地の差異を見いだすと共に、都城周辺の墓地・葬地の設定原理の共通点と相違点についての見通しを得た。唐皇帝陵周辺では、墓の立地・構造からみて等級制度に基づく造墓がおこなわれており、制度に則った個人単位の墓といえる。これは長安城周辺の墓地に認められる、居住区に程近い場所に家族・氏族墓としてのまとまりを保って造墓する様相とは異なる。今後、日本や韓半島(新羅・百済)の都城周辺の墓の様相と比較する上で重要な視点と考える。 国内では、都城および豊前・豊後地域周辺の墓地について、遺跡踏査や出土遺物の観察をおこなった。また、現在までの研究成果の一部を2011年11月に論文として発表した。加えて、国内における学会・研究会に参加し、情報収集に努めると共に、他研究者との意見交換を積極的におこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国調査の時期が当初予定とは変更になったが、調査対象遺跡の踏査および遺物の実見調査は予定通りに実施できた。中国・韓半島における実地調査は予定通りに実施でき、東アジア各都城の葬送地を比較するための基礎資料を集めることができたことから、研究はおおむね順調に進展している。今後これらの調査成果をとりまとめ、分析・考察を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の進展にともない、国内における国府周辺の「葬送地」の実態に関する知見が深まりつつある。当初計画どおりの中国・韓半島・日本の都城周辺の葬送地の分析に加え、日本国内における都城と地方官衙(大宰府・多賀城・国府)周辺の葬送地のあり方も視野に入れて分析・考察を進めたい。
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