地理学研究においては、等質地域の概念にもとづいて、一つの地域を区分すること(以下、「地域区分」と呼ぶ)がしばしば行われる。単変量属性値を持つ空間単位の集合のグループ分けによって地域区分を行うのであれば、等値線にしたがって区分を行う方法(以下、「等値線法」)によって、従来方法よりも均質な部分地域が見出せると見込まれるという結果を(ここまでの研究で)得てきた。 本年度は、空間単位の属性が多変量の場合、まず多変量属性に対して主成分分析を実行し、第一主成分得点の等値線にしたがって地域区分を行うという"拡張された"等値線法について研究を進めてきた。過年度までの研究においても、比較的空間単位数が少数であり、空間単位の属性は単変量である場合に限ってではあるが、等値線法および、先行研究において部分地域の高い均質性を実現すると目されている方法を実行するプログラムを作成・準備してきた。今年度は、多変量属性の場合にも用いうるように、そのプログラムに改変を加え、乱数発生による何パターンものデータへの適用結果より、以下のことを明らかにした。まず、属性が多変量であったとしても、平均的には、等値線法が従来方法よりも、内部の均質性が高い部分地域を見出すことを明らかにした。また、平均的にいって、等値線法は、比較的少数の区分候補を挙げた上で、内部が非常に均質な部分地域を見出す、"効率的な"方法であることも(考案した指標を用いて)明らかにした。さらに、変量間の相関関係が弱い場合には等値線法の従来方法に対する優位性が揺らぐものの、空間単位数が多くなれば、そうした弱点が解消されていくように見受けられるという結果も得た。 以上の成果を、日本地理学会の学術大会において発表し、質疑の場において、(本研究課題は最終年度を迎えたが)今後研究を深めてゆく上での貴重な示唆を得た。
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