4年間の研究期間の最終年度である平成24年度は,データベースの更新と補足調査を交えながら成果の発表と公刊を行った.まず,前3年度に渡って行ってきた英語圏における建設経済学に関する諸論文・テキストの整理・検討作業の成果が査読を経て『経済地理学年報』誌に掲載された.また3年間にわたって整備・更新を続けてきたENR誌Top International Contractors調査のデータの解析結果と,同誌の解説記事や既存研究の検討を踏まえた解釈を7月の経済地理学会関東支部の例会で報告した.この場での議論を踏まえた知見の骨子は学術論文にまとめられ現在,投稿中である. 4年間の研究期間を通じて建設経済学という日本ではほとんど浸透していない分野の成果を地理学的な視点より整理・紹介し,これらの枠組みを援用しながら戦後の国際建設業の地理的な動態を明らかにし,説得的な説明を示すことができた.このことにより地理学のみならず,建設業の産業研究全体に対して学術的な貢献をなすことができたものと考えている.しかし,国別の,さらには個別の国際建設業者に関する分析については多様な資料の収集を進めることができたものの,まだ成果を発表・公刊する段階には至っていない.また,多国籍企業論などの周辺分野の知見の検討やその上での理論構築についても十分な成果を挙げるまでには至らなかった.これらについては今後,検討と考察を進め,成果を発表していければと考えている.
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