昨年度に引き続いて地域におけるリサイクル事業に対する事例調査を進めた。福岡県大木町(生ごみリサイクル)、岩手県紫波町(木質廃棄物リサイクル)、北海道北広島市・苫小牧市・江別市・標茶町(下水汚泥リサイクル)、愛媛県内子町(食品廃棄物リサイクル)に対してヒアリング調査を実施し、データを得た。 昨年度までに構築したリサイクル事業に伴う地域への社会的影響の評価指標を実際の地域に適用した。対象は福岡県大木町である。福岡県大木町は、町内の生ごみをバイオガス化して処理しており、消化液は液肥として農地に還元されている。そうした農地で生産された米は、町内の小中学校の給食に利用されているほか、特別栽培米として販売もしている。また、町の中心にあるバイオガス化施設周辺には、地元産の農産物を扱うレストランを併設した道の駅をつくり、その周辺は農地が広がっている。これにより、処理施設周辺は、食の生産-消費-処理-循環を一度に経験できる空間となっている。道の駅のレストランはテレビ等でも取り上げられ、周辺地域から人々が訪れており、リサイクルを中心とした地域活性化につながっている。こうした事業の社会影響を見るために、社会影響の指標として昨年度までに抽出した交流人口、ソーシャル・キャピタル指標、地域愛着度、地域満足度、定住意思を調査し、社会影響の定量評価を行った。 3カ年の調査結果および関連発表を各種学会で行い、関連研究者との間で指標の妥当性や分析結果について議論を行った。社会影響の評価については現在、世界的にも注目されており、関連研究がなされている。今後は海外の研究者との間でも議論を重ね、よりよい評価方法を検討していきたい。
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