本研究のフィージビリティスタディとして、特許の経済分析および特許と集積の関係について文献調査を行い、方法論の整理と斯学への導入可能性について検討した。実証研究の進展としては、日本と米国の特許データベースを用いて、実際の実証研究に用いるデータセットの加工編集作業を進め、特に平成21年度は日本の特許データベース(具体的には「Patolis」のテキスト版)を扱い、Perlを用いてテクスト解析を行いデータベースの作成を進めた。データベースの作成にあたっては、日本の特許データベースを用いて特定領域を取りあげ、半導体デバイスの「メモリ技術」、薄型パネルディスプレイの「表示装置技術」などの基幹電子部品技術と、それらの統合製造技術に焦点をあててデータ構築を進めた。特許の分析と産業立地との関係を議論するために、今年度は薄型パネルディスプレイについて企業行動のケーススタディを現地調査などから進めて、1990年代前半から今年度までを対象にして、産業立地における機能変化・人員増減・配置転換などについて検討した。それと同時並行で売上高・営業利益・研究開発費・研究開発部門従業員数・研究所/開発センターの拠点数等も業界資料(『電子工業年鑑』など)などから時系列でデータベース化し、研究開発活動の類型化と特徴的な傾向を明らかにした。研究開発活動の類型化については、製品分野別と科学技術分野別でそれぞれ行い、各メーカーの研究開発費と人材のウェイトが部門別でどのように差異があるかという点に着目し、時系列での立地変動や組織再編と特許の生産性との関連性について考察した。以上の成果の一部について、今年度は論文1篇、学会発表3件、著書(分担執筆)2冊で報告した。
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