本研究の目的は、企業の「知識生産」に着目し、特許等のデータベースを利用した定量的な分析とフィールドに基づいた定性的な分析とを接合することによって、ハイテク産業における研究開発機能の立地と研究者・技術者の地理的分布から産業集積の含意を明らかにすることである。これまでの2年間の進捗状況をふまえ、日系企業を中心とした研究開発の動向を定量的なデータベースからその特徴を明らかにした。 その際、これまでの試行錯誤のなかから最も汎用的な利用可能性をもつIIPデータベースのカスタマイズデータを用いた。IIPデータベースの公開はまだ日が浅く、経済地理学や産業集積論の分野での利用は本邦初の試みとなる。具体的には、特許の定量的な分析から抽出できる研究開発活動の地理的側面を主に考察した。特に、日系企業によるアジアなどの産業集積への展開、集積間ネットワークの状態、研究者・技術者の流動性、電機・電子メーカーを中心とした技術開発状況(社内技報、理工系学術誌データベースなどからの考察)、研究所・開発センター等の立地集計データなどからの考察結果と合わせ、現代企業における知識生産の特徴、ハイテク産業の集積との関連性、アジアと日本の国際分業からみる今後の発展可能性などを検討した。前々年度、前年度までで実施したフィード調査で明らかになった知見を一般化することに主眼をおき、計量的な手法を用いて総括的な考察を行った。これらの研究成果を専門書、国内学術誌および海外学術誌に投稿する準備を進めた。
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