1.本研究(モビリティ・マネジメントにおけるバス交通サービスと居住者の空間特性に関する研究)は、(1)自動車の利用からバス交通に転換しようとする個人は、どのような特徴を持つ地域に居住しているか、空間的な分布を解明すること、および(2)居住者の周辺におけるバス交通のサービス環境との関係を明らかにすることを目的としている。 2.研究期間の2年度にあたる平成22年度は、昨年度に京都府宇治地域において行った公共交通マップの配布とアンケートの分析・検討をすすめた。その結果の一部は、第五回日本モビリティ・マネジメント会議や日本地理学会・持続可能な交通システム研究グループ例会にて発表した。公共交通の利用頻度が高い居住者はバスの運行本数やバス停からの居住地にくわえ、居住開始時期や就業地と大きく関係する。また、若年層ほど公共交通の利用頻度が高いが、これは、所得の減少とライフスタイルの変化による自動車の保有率の低下に起因するものと推察される。京都市西京区洛西地区におけるモビリティ・マネジメントについては、平成21年度注に複数事業者の交通情報を統一した路線図やダイヤ調整が実施されたため、研究対象地域と対象者を変更した。京都市内に位置する平安女学院大学の学生全員を対象に平日・休日の交通行動の調査を行い、居住地と公共交通の利用に関して検討した。その結果、京都市右京区や伏見区、滋賀県内の居住者ほど自動車の利用率が高い点が明らかとなった。これは、公共交通が相対的に不便なためであり、それに対して面接法によって公共交通の転換を促した。自宅と最寄り駅が平坦な居住者は自転車による転換の意志がみられたが、丘陵地の居住者は難色を示し、地形的な要因を検討する点が示唆された。以上をふまえて、モビリティ・マネジメントの継続的な効果を検討する。
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