本研究の目的は、人口減少の地域的展開を丹念に探るとともに、大都市圏や日本全体における人口分布の変動過程を検証することにある。本年度は、まず、以上の基礎作業として、(1)出生数・死亡数・転出入者数などの人口データの作成を進めてきた。その後、その一部を利用して、(2)2000年以降の近畿地方における市区町村人口の成長格差に関する実証分析と、(3)1980年以降における都道府県人口の成長格差に関する実証分析とを行った。その結果、(2)では、人口減少が山間部から中小都市、さらには中規模都市圏へと拡大してきた状況を、また、(3)では、人口増加が続く国土中心部と減少著しい国土縁辺部という対比の鮮明化を、それぞれ明らかにした。以上の(2)と(3)のいずれにおいても、地域人口の成長格差に対して、人口移動の重要性が未だに大きいものの、年齢構成に応じた出生・死亡の在り方の影響が次第に強まってきたことを明らかにしており、これは今後の地域人口を考える上で重要な知見であると考えられる。また、地域人口の変動過程をより詳細に理解することを目的として、(4)日本の旧軍港市における人口変動過程の分析に取り組むこととした。旧軍港市は都市発展の過程に類似性が強く、それは都市の産業構成や土地利用状況にも反映されているが、人口規模や都市の立地点には差異が見られることから、それらが都市人口の変動過程にどう影響するのかを検証する恰好の事例であると考えられる。本年度は各都市の歴史的経緯の把握に努めたが、近年になって人口減少が著しい京都府舞鶴市については、軍港建設以降から現代に至るまでの人口の変動過程に関する論考を執筆した。今後は、人口の変動過程に関する旧軍港市間の比較研究を進める予定である。
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