研究概要 |
1.軍港都市・舞鶴における人口の変遷の実態:近年の人口減少が著しい京都府舞鶴市は,軍港都市として発展を遂げるという特異な歴史を持つ。そこで,地形図と空中写真を活用しながら,舞鶴市の景観変遷とそれに関連する社会経済情勢の変化を明らかにし,世帯数の増加が市街地の拡大を導きつつも,全国的な脱工業化の中で人口を減少させてきた経緯を明らかにした。次いで,大幅な人口減少を記録した大正軍縮期を対象として詳細な人口分析を行い,海軍への依存度が高いがゆえに軍縮の影響が甚大であった中舞鶴地区と,新市街の商業繁栄地として人口減少を小幅なものにとどめた新舞鶴地区という差を詳らかにした。以上の内容は,近年の人口減少期を対象とはしていないものの,人口減少期の地域社会のあり方と地域人口の特性との関連を検討するうえでの貴重な成果といえよう。 2.近年における人口減少の地域的展開と地域構造:前年度に引き続き,自然増加と社会増加の関係に着目して地域人口の変化の過程を検証するとともに,そこから描き出される都道府県や地方単位での地域構造の変化について考察を深めた。その結果,入口動態からみれば,京都府は,京都市中心部から同心円的な地域構造を示すことを示した。また,地方単位では,大都市圏内か大都市圏外かで市町村の人口成長の格差が見られること,大都市圏内でも人口成長の格差が大きいことなどが明らかとなった。そして,以上の点についての考察を深めるべく,都心周辺や郊外での住宅地の状況について現地調査を行うとともに,文献研究を進めることを通して,日本の多くの地域や海外の事例との対応関係を探ることを試みた。
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