研究概要 |
2000年以降,神戸ケミカルシューズ産業は急激に衰退している。日本ケミカルシューズ工業組合加盟の企業数をみると,阪神大震災後の1995年には225社存在していた企業数が,2010年3月には99社へ急減した。震災直後,復興事業と中国,香港市場からの需要増によって「震災バブル」といわれる好景気が続いたが,2000年以降,過剰生産であった産地は,急激な国内市場の縮小にともなって,倒産,廃業が一気に加速している。 これにともない,産地の生産分業構造は崩壊しつつあり,産地のオルガナイザーである製造卸は,ますます生産部門を中国に移転させると同時に,中国からの完成品輸入品を仕入れる中間業者の役割へと変化している。そのため,裁断.縫製などの下請加工業者はさらに急減し,生産分業構造を維持することは困難な状況にある。 そのようななか,若者グループの取り組みは産地活性化の起爆剤として注目される。当該産地には,組合内部の青年部会によって,「紫陽花会」なる展示会,研修会を目的とした活動グループが存在している。当会の主な活動内容は,国内のバイヤーから注目を集める展示会の開催や,チャリティー活動である。しかしながら,近年,産地内で模倣製品が頻出し,当展示会の競争力は低下しつつある。そこで,「神戸シューズ」という地域団体登録商標を申請するなど,ブランドカの保守を目指した取り組みも行われている。さらに,当組合では2005年から若者を対象とした靴プランナー育成講座が開かれている。2009年度は7名が卒業し,このうち4名が靴業界に就職し,一定の成果を上げていることが明らかとなった。 以上の成果を踏まえ,2010年度は,製造卸機能がどのように変容しているかを問うたアンケート調査を実施するとともに,引き続き,紫陽花会に所属する優良企業と靴プランナー講座卒業生への聞き取り調査を進める予定である。
|