研究概要 |
本年度は,前年度に実施した「ネパール・ヒマラヤ高地における社会環境・生業活動の現状と近年の変容に関する文献調査・資料収集」により得た資料の分析を継続し,その成果の取りまとめを実施した。これにより,高地住民の生業戦略に関する近年の変化とその要因が明らかになりつつある。ネパール・ヒマラヤ高地における災害リスクについては,前年度に収集したネパールの自然災害と防災政策に関する資料の分析を進めた。これらの分析結果および初年度に実施したネパール東部のカンチェンジュンガ地域における現地調査をもとに,本研究計画の当初からの目的に沿って,ネパールにおける災害研究や防災実務の全体像のなかに高山帯を位置づけるための考察を進めた。研究成果の取りまとめは,本研究終了時点までに終えることができなかったが,引き続き継続する。 いっぽう,本研究計画上の比較対象地域であるインド北西部のラダーク地方において、前年度の途中にあたる2010年8月に豪雨災害が発生したことにより,前年度の半ばから研究計画の一部を変更したが,本年度においても,変更後の計画に従い,ラダーク地方における水害に焦点をあてた研究活動を継続した。具体的には,2010年8月の豪雨災害に関して,被災地域の災害前後の衛星画像の分析と,災害被害の社会的影響および地域社会の災害対応に関する補足的な現地調査を実施した(現地調査の実施には他の資金を用いた)。これらの研究成果にもとづき,ラダーク地方における今後の水害対策の検討に向けた具体的な提言を,学術論文の誌上で発表した。また,その研究成果や提言の内容を,ラダーク地方の水害対策に関わる現地実務者と共有するための会合を企画した。(会合は,ラダーク地方における氷河湖決壊洪水に関する情報交換会の一部として,平成24年度に実施される予定である。)
|