本研究では、東ヒマラヤ地域(東ブータン~インド北東部、アルナーチャル・プラデーシュ州)を対象に、民族移動の指標としての「埋没腐植土層」と「炭化木片」の年代測定を行った。その結果、当該地域では、約2000年前以降に民族移動に伴う人口増加によって土地開発が加速化された。また、約1000年前以降(特に500年前以降)に集中的な土地開発が実施されたことが明らかとなった。一方低地(ベンガル・デルタ:バングラデシュ)を対象とした研究では、ジャムナ川中流域では、約1200-1100年前に形成された洪水氾濫堆積物(自然堤防状の微高地)を利用するかたちで、それ以降に生産域と居住域の開発が行われた。その後も、幾度かの洪水に見舞われながらも、盛土の主体部の維持管理はマティ・カタによって、恒常的に実施されてきた。さらに、少なくとも約1300年前までには当該地域において、生産域としての水田開発に連動する形で、近隣地域に屋敷地が形成されたものと推定した。
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