本研究課題の目的は、パプアニューギニアの周辺社会の集団における石油資源開発とエスニック・アイデンティティーの高まりとの相関関係を検証することである。 平成24年度の研究目的は、3つのアンガ系集団、すなわち①テワーダ、②カメア、③メンイェのそれぞれについて、次の通りである。①テワーダに関しては、前年度までに収集した文献資料とインタビュー資料の分析を行い、石油開発によるエスニック・アイデンティティーの意識の高まりと、医療制度の導入および都市部との往復移動による社会変化との関連について明らかにする。②カメア、③メンイェについては、すでに収集した文献資料とインタビュー資料の分析を行い、石油開発を契機として始められた住民による行動を、テワーダの事例と比較して分析する。 平成24年度は、前年度までに収集した文献資料とインタビュー資料のデータ化と分析、論文執筆を重点的に行った。また、6月には、日本文化人類学会に参加し、当該研究課題に関わる最新の知見について他の研究者と意見交換を行った。同時に、国内での関連する研究会にも参加して研究発表を行い、参加した研究者との意見交換も行った。分析の目処がついた2-3月には、パプアニューギニアを訪問し、南部高地州において進められている液化天然ガスの資源開発に関する現地情報の追加収集を行った。前年度の調査によって、南部高地州での液化天然ガスの開発と、アンガ系諸集団の石油開発という二つの事例を比較参照することが意義あると見込まれたからである。二つの地域社会の比較検討によって、本研究で焦点をあてたアンガ系諸集団における石油開発の事例を、天然資源開発による地域社会へのインパクトという点からより深く理解できると考えている。これまでの調査研究を通じて得た以上の知見から、現在、研究論文を執筆している。
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