研究課題/領域番号 |
21720321
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
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キーワード | 南インド / 神霊祭祀 / 植民地化 / 母系制 / 環境問題 |
研究概要 |
平成23年4月には、国際学会(AAS with ICAS)にてポストコロニアル・インドにおける社会運動についてのパネル発表を行った。7月から9月にかけてスコットランドのエジンバラ大学南アジア研究センターにて在外研究を行い、イギリスのインド支配と宗教政策に関する文献研究を行った。また、当センターの南アジア研究セミナーにて南インドの神霊祭祀と母系制、近代法に関する研究発表を行った。同年10月1日には、日本南アジア学会第24回全国大会にて、「南インドにおける近代法と『母系制』の再編:アリヤ・サンターナ法とブータ祭祀の関係を中心に」と題する研究発表を行った。また、南インドにおけるブータ祭祀の実践を題材として、「呪術的世界の構成--自己制作、偶発性、アクチュアリティ」と題する論文を春日直樹編『現実批判の人類学』(世界思想社)に掲載した。同時に二本の英語論文を執筆し、それぞれを国際学術誌に投稿した(現在査読中)。これらの成果はいずれも、南インドの神霊祭祀を植民地化と近代化との関連から動態的に捉えなすとともに、これまで総合的な研究が稀少であった南インドの母系制と神霊祭祀、地域の土地利用の関係を明らかにしたという点において非常に重要であるといえる。また、2月22日から3月17日まで、カルナータカ州マンガロールにてブータ祭祀と土地利用に関する現地調査を行った。今回の調査において、調査地域の神霊祭祀・伝統的土地利用と環境問題の関連という新たな調査テーマに取り組み、その結果、調査地域の広大な領域を占有する石油精製・石油化学プラントと特別経済地域の存在が神霊祭祀に与える甚大な影響と、また逆に、神霊祭祀の論理とエイジェンシーが近代化学工業の内部に入り込み、その一部を左右するという事態が生じていることが明らかになった。本研究は平成24年度が最終年度であるが、引き続き環境問題と神霊祭祀の複合的な関係を調査し、成果を発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、当初の計画以上に進展している。当初の計画では、地域の神霊祭祀と母系制、土地利用、カースト制度について明らかにする予定であったが、これらのトピックに関する調査はほぼ完成しつつあり、さらに環境問題と神霊祭祀という重要なテーマに取り組み始めている。この最後のテーマを十全に調査研究することで、植民地化から現在に至る社会変化に伴う神霊祭祀の変化と、人々の再帰的な応答のありようを歴史的に記述できるという見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
9研究実績の概要の末尾に記述したように、平成23年度の調査において、近代科学技術・環境問題と神霊祭祀の関係という新たな研究テーマに取り組み始めた。本研究課題は平成24年度が最終年度であるが、これまでの研究成果をまとめるとともに、この新たな研究テーマについてもできるかぎり緻密な調査を行い、成果き発表する予定である。
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