本研究は、沖縄とハワイを結ぶトランスナショナルなネットワークに焦点を当てた多現場民族誌を作成するプロジェクトの一環として実施されるものである。本研究では、特にホノルル大都市圏を中心に展開してきた沖縄系コミュニティに注目し、その持続と変容の過程を明らかにする。現代の沖縄系コミュニティは、ハワイにおける沖縄文化の継承と共有を主な目的として様々な活動を展開している諸団体によって構成されるが、今年度は、主に非沖縄系の人びとの沖縄系コミュニティへの参加のプロセスに焦点を当てて、調査を行なった。沖縄系コミュニティは、ハワイにおいて最も活発なエスニック・コミュニティと称されることがあるが、沖縄系の諸団体のメンバーのなかには、非沖縄系のメンバーが少なくない。また、彼らのなかには、これらの団体において役員をつとめるなど中心的役割を果たしている人びともいる。彼らの多くは、必ずしも当初から沖縄文化への関心を抱いていたわけではなく、家族や友人との付き合いを通じて、沖縄系コミュニティを構成する諸団体の活動に参加するようになり、そして当該団体への参加の過程を通じて、しだいに沖縄文化への関心を深めていくようになる。このように、現代における沖縄系コミュニティにおいては、家族や友人との、いわば「顔の見える」関係を通じて各団体の活動にのめりこんでいく非沖縄系の人びとが一定の役割を果たしていることを、今年度の調査を通じて明らかにすることができた。
|