平成21年度では、マレーシアにおける上座仏教展開の全体状況、上座仏教寺院における僧侶と華人信者の役割分担、両者の相互補完的な関係について関連の調査を行った。具体的にクアラルンプールとペナンのスリランカ系上座仏教寺院、ミャンマー系上座仏教寺院を中心に、それぞれの寺院成立の歴史的経緯、僧侶、信者組織のあり方、今日の活動状況などについて聞き取り調査と資料収集を行った。そのほか、伝統的な寺院と異なる形態を見せる新興の上座仏教協会についても一部調査を行った。今日マレーシアではクアラルンプールとペナンのような大都市を始め、多くの地域にこれらの上座仏教協会の存在が確認される。こうした協会の成立は外来の僧侶の働きかけよりはローカルな信者たちの要望と努力に負うところが大きい。その意味で、それぞれの協会成立の歴史と今日の活動展開はマレーシアにおける上座仏教のローカル化のプロセスとその様態を表しているといえる。 21年度では上記の伝統型上座仏教寺院の活動、組織形態を一部把握したと同時に、新興の上座仏教協会の活動と組織運営についても調査することができ、マレーシアにおける上座仏教組織と活動の全体像を一定の程度において把握することができた。 なお、信者たちの実践活動について、クアラルンプールの上座仏教協会主催のインド巡礼・短期出家プログラムに参加し、信者たちの参加経緯、実践の形態などについて詳しいデータを入手することができた。 上記は21年度における現地調査を中心とする研究成果であり、今後引き続き、マレーシアにおける上座仏教組織の全体的な把握に努め、また信者たちのミクロな実践世界について考察を深めていきたいと考える。
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