平成22年度では、マレーシアの上座仏教寺院の運営、活動及び華人信者層の実践について、タイ系寺院とミャンマー系寺院について調査を行った。そうした調査を通して、今まで調査を行ってきたスリランカ系寺院と合わせ、マレーシアにおける三つの上座仏教寺院系統のそれぞれの活動スタイル、特徴などについて把握することができた。なお、シンガポールの上座仏教寺院の運営、活動についても調査を行い、両地域間の比較を行った。 平成22年度の調査では、上記の伝統型の上座仏教寺院のほか、近年創設されている新規の上座仏教センターについても調査を行った。近年マレーシア出身の華人僧侶及びその寄進者、信者たちにより、瞑想の実践を中心とする上座仏教センターが多数設立されている。そうした上座仏教センターは具体的にどのような経緯のもとで設立されたのか、現在どのような活動を展開し、どういった人々によって支えられているのか、またどのような活動理念、将来のビジョンをもっているのかといった問題について聞き取り調査を行った。外来の僧侶ではなく、ローカルなマレーシア人僧侶や信者を中心とする上記の上座仏教センターの展開、そのあり方は「マレーシア的上座仏教」のあり方そのものを表しており、またそれがマレーシアの上座仏教の現地化のプロセスと捉えられる。22年度の現地調査では、そうした問題についてある程度明らかにすることができた。 今後の調査では、上記平成22年度の現地調査の成果を踏まえ、個別な華人僧侶、信者たちの実践、ライフスタイルなどのデータを集め、より具体的にマレーシアの上座仏教の現地化の諸相について考察していこうと考える。
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