平成23年度では、マレーシアにおける上座仏教展開のローカル化の諸相について、とくに一部の新規上座仏教センター、関係の僧侶、信者に焦点を当てて、調査を実施してきた。 マレーシアにおける上座仏教施設として、ミャンマー、タイ、スリランカ系僧侶中心のいわゆる「伝統型」の上座仏教寺院と同時に、1980年代前後よりローカルなマレーシア人僧侶、華人信者を中心に設立された上座仏教センターも増加している。後者の新規上座仏教センターは瞑想実践の展開、仏教知識の提供を中心としており、今日ではすでにマレーシアにおける上座仏教の重要な局面となっている。その背景として、現地の上座仏教系マレーシア人僧侶(基本的に華人である)または、信者層の成熟化があげられるといえる。現地人僧侶、信者たちのニーズで、また彼らのコミットメントにより、「伝統型」とは違う、「真正な」仏教実践追求型のローカルな上座仏教センターが誕生してきている。 平成23年度の調査では、ペナン州、ペラー州の複数の新規上座仏教センターを訪問し、それぞれがどういう経緯で創設されるようになったのか、現在どのような活動を行っているのかについてデータを集めた。また、関係の現地人華人僧侶、信者について複数インタビュー調査を実施し、関係者の具体的な実践の把握に努めた。 なお、現地調査と同時に、国内学会、海外の学会での発表を複数行っており、研究成果の発信を行ったとともに、ほかの研究者との意見交換をはかった。
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