H21年度は、当初計画で掲げた(1)先行研究文献の収集およびその理解と検討、(2)研究会の開催と分析枠組みの構築、(3)事例調査と分析の3項目に沿い、文献を通じて開発現場におけるフィールドワークの相互作用性に関する理論的な考察枠組みの検討を行った。 また、本研究の議論の場として研究代表者が主宰している「開発ファシリテーション&フィールドワーク」勉強会を6回にわたって開催し、開発現象のフィールドワークおよび開発現場でのファシリテーションの先駆的論者および実践者を講師に招き、最新の現場事例の検討などを通じて議論を深めてきた。 その結果、フィールドワークの介入性について、フィールドワークを行っているアクターと他者との二者関係だけではなく、複数の他者との相互作用が生まれる「場」を捉え、「場の特性」を検討していく方向性が次年度の課題として明らかになった。 「場」の概念の検討を視座におきつつ、2010年1月にはインドネシア南スラウェシ州の農村および関連機関を訪問し、聞き取り調査を行った。事例の考察を通じて、フィールドワークの介入性検討において、アクターであるフィールドワーカーの属性や社会的立場によるバイアスは、アクターをその場に存在させる上では決定的な意味を持つが、「場をなしていく」プロセスにおいてはより場当たり的な知が生きてくるということが、より具体的な検討課題として導かれた。 初年度の成果は、2つの論文(「フィールドワークが生きる場:開発」鏡味他編『フィールドワーカーズ・テキストブック』および小國・亀井編『支援のフィールドワーク』いずれも現在編集中で世界思想社より2010年中に出版予定)に執筆し、今後公表される予定である。
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