研究課題/領域番号 |
21720331
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鈴木 岳海 立命館大学, 映像学部, 准教授 (20454506)
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キーワード | 文化人類学 / コンテンツ・アーカイブ / ネットワーク / 映像人類学 / 映像アーカイブ |
研究概要 |
本研究の目的は、研究者と調査対象者による映像制作手法の開発と複数の調査地域の人々をつなぐ「映像アーカイブ利用のシステム化」のモデルづくりを行うことである。3年目に当たる本年度は、以下の3つの具体的な成果をあげた。 1、現代の京都市静原における男性の成人儀礼を記録し、30年前におこなわれた儀礼と比較することを通して、村落における住民の所属意識と役割分担の意識の変化だけではなく、それの背景にある都市部と村落をつなぐ環境の変化や住民の社会関係の変化が、伝統的な祭りや行事をこれまでと同じように維持することを難しくしている状況が明らかになった。 2、ネパール・カトマンズにおける婚姻儀礼の調査撮影から、調査対象と共同して映像を記録し、記録した映像をフィードバックすることが、映像記録のアーカイブ化においてきわめて有効に働くことが明らかなとなった。このことは、映像アーカイブのシステム構築に向けて、映像記録とアーカイブ化における問題系を同定し、調査対象者とともに年中行事の映像を記録し、意見交換をおこなうことでそれぞれの場で共有されてきた「ローカルな知」を交錯させた情報共有を推進する共同調査手法が、各地域の人々が通文化的な視点を導入する映像利用のシステム化において有効であることを物語っている。 3、京都での比較調査を目的におこなった剣鉾行事の映像アーカイブ制作を試みから、無形文化財のCG復元といった他領域で、映像アーカイブの活用に応用できる可能性があることが作品制作を監修することによって明らかになった。このことは、記録映像の映像アーカイブ活用と、映像アーカイブ化に関して、実践的なシステムの構築に向けた文理融合の領域横断的な研究と、社会還元への取り組みへの端緒となると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者と調査対象者による映像制作手法の開発と複数の調査地域の人々をつなぐ「映像アーカイブ利用のシステム化」のモデルづくりに向けて、複数地域において年中行事を中心とした映像記録を調査地域の住民とともに着実におこなっている。また、映像アーカイブの活用に関して、他領域への応用可能性を実践的に検討できている。一方、調査期間の問題や調査者との関係構築の段階により、映像記録を網羅的に進めることができていない。 また、映像記録と映像アーカイブ化の実践が進み、研究会での発表はあるものの、これらの取り組みに関して研究ノートと報告書にまとめている途中であり、論文として報告できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
「映像アーカイブ利用のシステム化」のモデルづくりに向けて、複数地域において年中行事を中心とした映像記録と映像アーカイブの構築を調査地域の住民とともに進めていく。本プロジェクトで予定していたスペインの地域住民との協力関係の構築が難しく、研究推進に大きな障害となっており、複数地域の映像アーカイブの利用と多様な研究領域への応用を見据え、京都市の無形文化財となっている剣鉾行事の映像記録と映像アーカイブ化を試みる。
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