本研究では、(1)魚油・魚粕の生産技術と道具の北海道への伝播過程、(2)北海道における技術改良、を明らかにすることを目的とする。伝播過程の解明については、魚を煮るための大釜と油・水分を搾り取るための圧搾器に焦点を絞り、北海道の魚油・魚粕生産と深い関わりがあると考えられる東北・房総半島・紀伊半島・北陸地方のイワシ漁業地や釜・漁具製造地に保存されている加工・生産用具の実地調査を実施する。北海道における生産技術と道具の改良については、ニシンの加工・生産用具に焦点を絞る。 平成21年度においては、北海道大学附属図書館(札幌市)、北海道立図書館(江別市)において、魚油・魚粕生産技術の伝播と改良に関連する文献・新聞資料の閲覧・複写調査と関連データのデータベース化を実施した。合わせて、北海道の比較地域としての樺太における技術改良に関する新聞資料の複写を行い、昭和5年頃の煮釜改良の試みや圧搾器の使用状況などを確認した。 また、北海道利尻地方、三重県津市・鳥羽市、青森県青森市・八戸市、広島県福山市・広島市において、博物館・教育委員会所蔵の魚油・魚粕生産用具の形態・構造、大きさ、材質等のデータ収集、使用方法や対象魚種等の聞き取り調査を行ったほか、地元図書館における関連文献資料調査を実施した。これらの調査では、圧搾器で油・水分を搾り取ったあと、魚粕をいかに効率よく・労力をかけずに抜き取るかという点で、各地の圧搾器において改良の跡を確認することができた。
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