本研究の目的は、割山制度をめぐる自然資源の伝統的管理システムと資源の利用体系を明らかにし、地域社会における持続的な資源利用モデルを提示することである。そこで、本年度は研究の目的を遂行するため、下記の調査研究を実施した。 はじめに、干溝地区では割山および土地利用等を記した約160点の区有文書を保管しており、これらの写真撮影と翻刻をすすめた。この中には割山の区画を示す大判の絵図も含まれ、資源管理システムを明らかにする上で基礎資料となるものである。これらについては、今後デジタル画面上で汎用性の高い解析ができるよう、分割撮影し、そのデジタル画像を接合する処理をとった。割山の利用権者と面積を記した割当帳については、翻刻とともに割当の数値データを整理して集計できるようにした。今後、絵図と割当帳を照合し、現地住民への聞き取り調査をすすめる予定である。 次に、GPSを活用した調査については、干溝地区の道普請の共同作業に参加し、GPSを携帯して作業ルートを確認した。これと同時に、林野の利用と管理について聞き取り調査を行った。今後も、割山の林野区画、資源採集のルートとエリア等をGPSで計測し、データを蓄積する予定である。 また、「区有山林割山規約」(大正14年)の文書をもとに、聞き取り調査を実施。規約では、割山の対象となる林野を3つに大別し、第1区を15年、第2区を30年、第3区を45年ごとに、利用できる割当地をくじ引きによって変更すると記されている。しかし、利用権の再配分は実際に行われた事実はなく、新たなルールを築いて資源を管理していることが明らかとなった。こうした新たな資源管理システムは、どのような意思決定のもとに、社会的に認知・承認されていくのか、今後の研究課題となる。
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